夏を殺して。


わたしのためにアイスを買ってよ。それから、また、なんだよって笑ってよ。


「たく、しょーがねーなー」

「じゃ、よろしく。わたしここでくつろいでるから」

「何味?」

「わたしっぽいの選んできてよ」


なんだよ、それってまた笑って、ちょっと手をあげて行ってくるわって走って。

これだけは全部全部わたしのためのものだから。



教室の扉が閉められて、それからちょっとだけ経ってから。


空気よりもちょっと冷たい銀色の取手に手をかけて、扉を開けた。


それから、村上が走ったみたいに、わたしも走って学校を飛び出した。



わたしのために買ったアイスを、私がいない教室で食べてよ。

わたしのことを思って食べてよ。

しょーがねーなって、ちょっと溶けたアイスを、吉田、無責任だなーって思いながら、その時間はわたしのことを考えて食べて。