アリシアは青果店の前で嫌な光景を目の当たりにしていた。それはよく目にする光景ではあったがドラグニール王国が抱える闇の一つと言うべき行いであった。
 
 犯行現場を見たわけではないが容易に想像がついた。棒切れを持っている青果店の主人らしき男が小汚い格好をした12才くらいの子供を痛めつけている。アリシアはその光景をみて唇を噛む。なんて惨いことをしているのでしょう。きっとこの子供は戦災孤児である。

 打ち付けようとする棒切れをアリシアは剣を抜いて弾いた。ごたごたに巻き込まれたくなかったが騎士としてのアリシアがそれを許さない。
「おやめください。これ以上は死んでしまいます」
「あぁあん!邪魔すんじゃねえ」
怒りに任せて青果店の主人はアリシアを見ることなく吐き捨てるも、アリシアが剣を主人の首元にやると主人は殴るのをやめて、アリシアに向きなおる。