アリシアは大門をくぐると、門番に首からかけていた銀色の鉄製のプレートをみせる。門番はそれを一瞬だけ拝見するとすんなりと街の入場を許可した。平治でもあるしアリシアの存在を周知している。アリシアのような有名人の身分確認など本当は必要がないのだった。それでもアリシアがいちいち形式的にプレートを提示してきたので一応確認しただけである。これが隣国所属の商人や冒険者なら、門番についている兵士はちゃんと確認をする。だから決してサボっているわけではない。ただアリシアが生真面目なだけである。

 アリシアは街に入ると先ず馬屋に愛馬を預けた。
「水と飼葉をお願いします」
みすぼらしい格好をした初老の男性はわかりましたと返事を返して手綱を引いて奥に連れていき水桶を馬の前に置く。それを見届けてアリシアは徒歩でギルド会館に向かった。その姿を見て、エルザは踵を返して行商人の警護に戻って行った。少し過保護すぎるかと思いながら……