有無を言わせぬ眼だ。
専務は西嶋さんの扱い方をわかってる、流石だ。
「……わかりました」
西嶋さんは渋々了承する。
専務相手に嫌とは言えないだろう。
「今度は海外営業部に遊びに行くね」
専務は全てお見通しなのか、西嶋さんにはわからぬよう私にそっとウィンクした。
「ええ、是非。お待ちしています」 
とびきりの笑顔で返して専務室を出ると、般若のような顔をした西嶋さんが待ちかまえていた。
「調子に乗るんじゃないわよ。瑠偉さんには私がふさわしいんだから」
彼女は専務と私が親しかったのがショックだったらしい。
私の邪魔をするつもりが、プライドを専務の前で傷つけられ、私に牙を剥いてきた。
だが、私は逃げなかった。
「私はただのアシスタントです。今回の事は一条さんには報告しませんが、やり方が間違ってますよ」
一条さんが好きなら彼の仕事の邪魔をしないでほしい。
「失礼しました」
一礼して彼女の前から去る。