一条のその言葉を聞いて、俺は思わず自分の耳を疑った。
人は本当に変わるものだと実感した。
あの一条が女を口説き、溺愛する。
奴と付き合いの長い俺は、最初信じられなかった。
だが、今は一条の嫁となった東雲芽依の首筋に奴の所有の証を見つけた時は認めざるをえなかった。
ーーエセ王子が色ボケ王子に変貌した。
それからは口紅を拭い忘れて俺と打合せしたり、部長室で眠ってる彼女にキスをしたり……と俺が知る限り奴はやりたい放題。
母親の詩織さんでもあいつを止めるのは無理だろう。
自分の顔をフォークで傷つけてでも守った女だ。
一条にとってかけがえのない女。
一見地味な女だが、ちゃんとした格好をすれば奴の前で極上の女に変身する。
それを許すのは一条がいる時だけ。
どんだけ独占欲強いんだって思う。
正直、そんな女に出会えた一条がうらやましい。
現在、一条の嫁は妊娠中だ。
今年の三月末で退職した一条の嫁は、最近は詩織さんとベビー用品を見て回っているらしい。