一体何枚撮ったんだ?
相当楽しんだな、あの人。
単身で帰国するなんて、きっと親父が忙しくて相手にしてもらえなかったからだろう。
あの人を暇にさせておくと、ろくなことがない。
「やけに食い意地のはった誘拐犯だな。どうする、お前?」
佐久間の声が楽しげに聞こえるのは気のせいだろうか。
「芽依が人質なんだから迎えに行くしかないだろ。あの人、俺が動かなきゃ本当にフランスに芽依を連れて帰るよ」
苛立たしげに言って髪をグシャッとかき上げる。
「お前も詩織さんが母親で苦労するな」
佐久間が憐れんだ目で俺を見るので、少しムッとしながら命じた。
「お前、芽依の添付写真は速攻で削除しろよ」
「へいへい。相変わらず独占欲の強いことで。でも何で詩織さんは俺にもメール送ってきたんだ?」
佐久間が俺の前でデータを消す。
「俺がメールを無視しないための保険だろ」