いつの間にかボーッとしていたらしい。
キスの余韻に浸ってた。
例のごとく、佐久間がまた俺の頭を書類で叩く。
「本気で叩くなよ。痛い」
頭を押さえて文句を言う俺にこいつは怖い顔で言い返した。
「五月蝿い。お前ののろけ度に比例して強く叩いてんだよ」
「お前、ホント鬼軍曹だね。あっ、命名したのは俺じゃないから。東雲さんだよ」
クスッと笑みを浮かべてそんな話をすれば、こいつは一瞬ポカンとした顔をした。
「……鬼軍曹」
抑揚のない声で呟く佐久間。
こいつとしてはショックだったらしい。
流石に芽依は叩けないだろう。
彼女を叩いたら俺が百倍返しするけど。
だが、俺が悪い虫扱いされてた事はこいつには秘密だ。