だが、まだ飲み込めていないらしい。
相変わらず姫は鈍感。
「プロポーズしてるんだけど。返事は?」
「私で本当に良いんですか?私……」
「芽依だけ持ってうちにお嫁に来てくれればいい。他には何もいらない」
俺の言葉に、芽依の頬から涙が零れた。
その涙を綺麗だと思いながら、彼女の頬に触れる。
「瑠偉さんは勝手にいなくなったりしませんか?私をひとりにしませんか?」 
芽依も俺の頬に触れ、傷跡を指でそっとなぞった。
「離してって言われても離すつもりはないから覚悟して」
俺は優しく微笑する。
「はい」
芽依は何かを噛み締めるかのように頷いた。
そんな彼女が愛おしくて、佐久間に注意されてはいたが自販機の影に彼女を連れ込んでキスをした。



その日の定時後、佐久間と打合せをしていたのだが、彼に怒られた。
「こら、この色ボケ王子!打合せ中だ。何惚けてる?」