「俺は日本にいるし、一条の方が都合が良いけどね。じゃあ、行くよ」
私の目を見る彼に笑顔で頷いた。
「はい」
これから私は彼と夫婦になるんだ。 
瑠偉さんが書類を取り出して窓口の係のおじさんに提出した。
おじさんは書類に目をやりにっこり微笑む。
「お預かりします。正式な受理は職員確認後になります」
「よろしくお願いします」
瑠偉さんが軽く頭を下げる。
ちょっとぼーっとしていた私も慌てて頭を下げた。
「なんか意外とあっさりなんですね」
さっきまで緊張してたのは何だったんだろう。
昨日だってよく眠れなかったのに。
そう思うと笑えてくる。
「何ニヤニヤしてるの?」
「ニヤニヤなんてしてません。提出してほっとしてるんです」
「そう?書類に不備がなければ、もう今から芽依は一条芽依だから」
瑠偉さんは至福の笑みを浮かべると、私の左手の薬指にそっとキスをした。
そこには婚約指輪が輝いている。