「離してって言われても離すつもりはないから覚悟して」
「はい」
私が頷くと、瑠偉さんは私を自販機の隅に引っ張ってキスをした。
微かにコーヒーの味がする。
きっと私よりも朝早く来て仕事をしていたに違いない。
瑠偉さん働き過ぎ。
キスを終わらせると、彼はクスッと笑った。
「芽依は桜のお香のいい匂いがする。自分と同じシャンプーの香りもいいけど、やっぱり芽依にはこの香りかな」
そう言えば、私がここに異動になった日も、瑠偉さんはお香の匂いを褒めてくれたっけ。
彼が私を抱きしめてしばらくキスの余韻に浸っていると、突然瑠偉さんが何かに気づいたのか私の体を隠した。
「お取り込み中失礼。海外営業部の社員さんがコーヒーを飲みたいそうなんですが、まだ続けます?」
それは、同期の玲子の声。
嘘、彼女に見られた?
いや、彼女だけじゃない。
同じ部の人にだって!
顔面蒼白になる私。