「……聞こえなかった?嫌だって言ったの」 「……え」 セツナはゆっくりとプールサイドにしゃがみ込んだ。 セツナの赤い唇の端がにぃ、と上に持ち上げられる。 「サクノは本当に鈍感だなぁ」 目の前で起きていることが、なんでもないかのようにセツナは嗤う。 温かったはずの水はいつの間にか凍えるほどに冷たく、それがサクノの勘違いなのか、実際に冷たくなっているのか、サクノには分からなかった。 ただ顎を震わせ、セツナを見上げる。