氷雨の降り注ぐ世界の片隅で、少年は独り空を仰ぐ。


 別に理由なんてない。気がつけば、空を見上げていた――ただ、それだけのことに過ぎない。



 でもなぜだろう。こんなにも酷く心が痛むのは。



 誰も少年には目もくれない。まるで始めからそこには、何も存在してないように。



 そんな少年の前に、淡い香りを纏った少女が現れた。遠く、切ない、懐かしいーーそんな気持ちにさせられる。そう思う理由は、やはりわからないが。



 漆黒の長い髪に、ローズクオーツのドレス。物語に出てくるお姫様のような少女が、花が咲いたような笑顔を浮かべて。




「探したよ“魔王様”」