【番外編】好きの海があふれそう

●CASE 01.幼稚園時代

「でね、ヒロくんが超かっこいいの! お散歩のとき手つないだんだ~」

「へ~、そうなんだあ」



杏光が満面の笑みを浮かべて好きな人の話をしてくる。



恋なんてよく知らない俺はポカンとその話を聞いている…。



●CASE02.小学生時代

「聞いて! 彼氏できたー!」

「ええっ、まだ5年生なのに?」

「5年生で初彼氏なんて遅いくらいだよ。海琉も早く恋人作りな~」



得意そうに初めての彼氏を自慢してくる杏光。



小学生で恋人ができるなんて俺には想像もつかない。



そんな杏光はその2か月後、『好きじゃなくなった』とすぐに破局を迎える…。




●CASE03.中学生時代

「ビッグニュースがありまーす」

「なに?」

「工藤先輩とキスしちゃった! 初チューが工藤先輩なんて最高~」



にっこにこの杏光からそんな報告を受けた俺は飲んでいたお茶を吹き出す。



き、キス…?



俺には異次元の話に聞こえるし、なんかちょっと聞いててこっちが照れてしまう。



「顔赤いよ。海琉ってほんとピュア」

「だって…」

「学校の子たちはすぐ海琉との仲冷やかしてくるけど何であたしがこんなピュアボーイとどうこうならなきゃいけないんだ…」

「俺と杏光とか絶対あり得ないっ」




●CASE04.高校生時代

「この前夏樹としたエッチ最高だった」

「ちょっ…きゅ、急に変な話しないで!」

「いいから聞いてよ、あのね、夏樹があたしのことこうやって押し倒して~」



杏光が面白がって俺のことをベッドに押し倒す。



杏光はちょいちょいこうやって彼氏とのあれこれを俺に事細かに教えてくる。



なんで俺で再現するの!!



「『好き』」

「は、はあ!?」

「最後にこうやって囁かれてさあ~、もうキュンが止まらなかったの」



ちょっともう…恥ずかしすぎるんですけど…。



面白そうに俺の上に乗っかる杏光をどかしてベッドの隅で丸くなった。



杏光が笑いながら俺の肩をポンポンと叩く。



「ごめんって。ちょっとからかっただけ」

「『ちょっと』?」

「まあ海琉には刺激が強かったか~」



俺は頬を膨らます。



どうせ俺は杏光にとってはお子様ですよ…。



杏光はそんな俺をいつまでも笑ってた。