【番外編】好きの海があふれそう

「綺麗だね…」

「だな」

「悠麗…ずっとここにいてよ…」

「そうだな…。そうするか」



嘘でも悠麗がそう言うからあたしは嬉しくなった。



本当にそうなるような気がした。



だけど別れの日は近づいてくるもので…。



「悠麗…元気でね…」



空港で、あたしは涙が止まらない。



悠麗もなんだか表情が暗くて。



「俺…玖麗いなくなったらもっとバカになりそう」

「え?」

「玖麗いない間、俺もう玖麗の亡霊って感じだったから…。こんなに長く会ってまた会えない日が続いたらどうなるか分からないわ…」

「また毎日連絡取ろう? 電話の回数も頑張って増やす…」



悠麗はふっと笑った。



それから優しい目であたしのことを見る。



「じゃあ…な? 元気でいろよ?」

「悠麗もね…」

「なにか心配ごとがあれば言うんだぞ」

「うん…ありがとう…」



悠麗と強く抱きしめあって。



人目もはばからず、長い長いキスをした。



あたしが戻るまであと数か月。



あたし、一段と大きくなって戻ってくるから。



だから悠麗、それまであたしを待っててね。



あたし、悠麗のことが大好き…。



離れるのが惜しくて、なかなか2人体を離せなくなって。



このまま飛行機に乗れなかったら悠麗どうなるのかな。



なんてちょっと良くない考えも頭をよぎった。



がんばって悠麗から体を離す。



「じゃあね…」

「おう…気を付けてな」

「悠麗もね…」



空港の奥に消えていく悠麗をあたしは泣きながら見送った。



会えなかった分、チャージはできた。



寂しくて死んじゃいそうだけど…。



悠麗が待ってくれるから頑張る。



悠麗にもらった指輪を触って、あたしは毎日を強く生きた。