あの日、祐真さんにわがままを言った。

それでも彼はいいと言ってくれて、

一緒に頑張ると言ってくれた。

だからとにかく私は頑張る、

んだけど…

「宮本選手、筋肉すごいんですね!え、触っていいですか?」

テレビの収録中。

選ばれた代表が男子も女子も数人ずつ出ていて、

私もこの次の取材には写真撮影だけ入らなくてはいけないから、

同行してる。

目の前で筋肉フェチだという可愛いスポーツアナウンサーの方が祐真さんの腹筋あたりをペタペタと触る。

…思わず漏れたため息。

今の私にそれをどうこういう資格も無いけど、

自分にもバレー以外でこんな気持ちがあったんだなと感じて少しびっくり。

見ないように、

撮影場所の隅で壁に向かってイヤホンをつけて、映像をみながらまとめていく。

集中すると、時間はあっという間にすぎて、

肩をトントンとされて振り返る。

「あおさん!休憩入りました!俺も映像みたい!」

渉が目の前にいて、

座ってた長椅子は一つしかないから半分譲る。

「隣失礼します!」

嬉しそうに渉が横に座って、イヤホンを外して2人で映像をみてると、

「宮本選手、本当カッコいいですね!写真撮ってもらえませんか!」

イヤホンを取ると周りの声が耳に入る。

…少し気になって視線を移すと、

少し作り笑顔で写真を断ろうとする祐真さん。

アナウンサーの方の手はしっかり祐真さんに触れてて…

「あおさん、よそ見!」

渉が私の視線に割り込んで言う。

「…そうだね、ごめん。しっかりしないと。」

気にしない。

気にしてる暇があるなら頑張らないと。