[ずんぐり魔族と私の闘い]

「あれー? いない。ここにいるって言ってたのにな」

「まま、どこ? ままー」

 ゴーカート乗り場で、幼い姉妹がきょろきょろしている。

 あの子達、ママとはぐれたんだ!

「あなたたち、迷子? お姉ちゃんが一緒に探してあげる。行こ」

 早くレストハウスに連れていかなきゃ。

 ふたりと一緒に歩きだそうとした、そのとき。

「おまえがぁ。ざっぎがらヂョロヂョロじでだのはぁ。おがげで、だれも、いねぐなっだだろぉがぁ」

 背中が泡立つような、ねっとりとした声がした。

「え、そんな」

 いつの間にか、ずんぐり魔族に囲まれていた。みんな土玉を持っている。

「おまえ、やっばりおらだぢが、みえるんだなぁ?」

「お姉ちゃんどうしたの。ねえ、行こうよ」

「ごめん! ここに隠れてて! しゃがんで。悪者がいるの。いいって言うまで出てきちゃダメだよ!」

 咄嗟に、チケットゲートの囲いの中に二人を入れた。囲いは低いけれど、小さな二人なら十分隠れられる。

「ぴぃちゃん、お願い、誰かに知らせて」

 ポケットからぴぃちゃんを出し、鳥に変化してもらって飛ばす。あとは、私が土玉を避けられれば……。

 パパの竹刀を取り出し、手痕に合わせるようにして、持つ。

「お願い! パパ、私たちを守って!」

「おまえ、あぞびあいでに、ぎーめだ! ゲヘゲヘゲヘゲヘ」

 割れたような声ですごい気持ち悪い。ゾワゾワと鳥肌がたった。

「ざあ、おどれぇ~」