[麗しの銀髪天使の正体]

 引っ掻き傷だらけの髭天使と、ちびっこを捕まえている警備天使達に連れられて、建物の中の一室に入る。

 そこは、最初に私がいた部屋よりもはるかに広かった。

 真っ白な中、壁にかけてある一枚の絵と花瓶にある花だけが、眩しいくらいの色彩を放っている。

 大きな窓にかけられた薄手の白いカーテンが、ふわふわと風に揺れた。部屋の中には誰もいない。けれども、窓が開いているってことは、あの優しい声の主は、バルコニーの方にいるのかも。

【そのお方にある印は、確かに〝彼〟のもの。ご苦労様。警備は下がりなさい】

「は! 失礼します!!」

 髭天使他数人がきびきびと部屋から出ていく。

 声の主は姿を見せないままで、私の印を見ていない筈。

 なのにどうしてアクマ天使のだって分かるの。それに、名前じゃなく〝彼〟と言った。それにはとても親しみがこもっていて、すごく胸がモヤモヤする。

「ん? どうしたの?」