[私にも、深~い事情があるんです]

 次の日。朝の九時ごろ迎えにきたアクマ天使に、歩くことを提案してみた。

「ね、ナビっちの反応ないならさ、今日は歩こうよ。探しながら、教会まで行こ」

 ね?って笑いかける。けど、アクマ天使の反応がない。玄関先で、黙ったままじーっと私を見ている。

 私の頭の先からつま先まで眺めて……何を考えてるんだろう。

 今日の格好は、買ったばかりのボーダーTシャツとショートパンツ。もしかして、似合わないとか、着替えろとか言うのかな。

「ね、私どこかおかしい?」

「いや、そんなことねえ……が」

「が? 何よ。はっきり言ってよ」

「いや、今日は、制服じゃねぇんだな。と思っただけだ」

「当ったり前じゃん!」

 何言ってんの。学校休みなのに、プライベートで制服着て出掛ける子なんて滅多にいないよ。貴重だよ。

「まさか、制服の方が都合がいいの?」

 制服じゃないと手の印が発動しないとか、空飛ぶと姿が見えちゃうとか。

「ああ違う。意外に新鮮だっつーことだ。気にすんな」

 新鮮? 意外に? カワイイとかじゃなくて? 気にするな?

「それって褒めてんの、けなしてんの?」

 ブツブツ言いつつ首をひねっていると、アクマ天使の背中にあった大きな白い翼がフッと消えた。

 どこから出したのか、いつもの縁なしメガネをかけた。途端に輝く金色だった髪がグレーがかり、それがみるみるうちに濃くなって、とうとう真っ黒になった。

 魔法使いみたいだった天使服も、普通のシャツとジーンズになっている。まるでCGを観ているみたいだ。