大荷物を抱えながらとぼとぼと歩きだす。ビレッジ内にある高層オフィスビル前でタクシーを捕まえてひとまず紗希の家に戻ろう。後ろを振り返ることはしない。
きっとしばらくは父の病院にも顔が出せないだろう。ここに来てしまったら薫さんとの思い出が蘇って辛くなってしまうもの。必死に涙を堪えながら歩いていると、
「そんなに大荷物を抱えてどこに行くの?」
聞き覚えがある声が真横からして、視線がそちらへと動く。
「名波先生……」
「どうした? なにがあったの?」
視線が交わると、すぐに私の様子がおかしいことに気が付いた名波先生が駆け寄ってきて、心配そうに私の顔を覗いた。
自分の感情がうまくコントロールできなくて、作り笑いさえすることができない。願わくば今日は誰にも会いたくはなかったのに。
「……なんでもないです。大丈夫ですから」
「こんな状態の美月ちゃんを見てほおっておけるわけないだろ」
名波先生がそう言って、私が抱えていた荷物とスーツケースを手に取った。
「な、名波先生?」
「ひとまず俺に着いてきて」
名波先生がスタスタと歩き出し、慌てて名波先生の後を追う。
きっとしばらくは父の病院にも顔が出せないだろう。ここに来てしまったら薫さんとの思い出が蘇って辛くなってしまうもの。必死に涙を堪えながら歩いていると、
「そんなに大荷物を抱えてどこに行くの?」
聞き覚えがある声が真横からして、視線がそちらへと動く。
「名波先生……」
「どうした? なにがあったの?」
視線が交わると、すぐに私の様子がおかしいことに気が付いた名波先生が駆け寄ってきて、心配そうに私の顔を覗いた。
自分の感情がうまくコントロールできなくて、作り笑いさえすることができない。願わくば今日は誰にも会いたくはなかったのに。
「……なんでもないです。大丈夫ですから」
「こんな状態の美月ちゃんを見てほおっておけるわけないだろ」
名波先生がそう言って、私が抱えていた荷物とスーツケースを手に取った。
「な、名波先生?」
「ひとまず俺に着いてきて」
名波先生がスタスタと歩き出し、慌てて名波先生の後を追う。

