お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言

「こないだはなんかバタバタしていてすみませんでした」

「いや、久しぶりに話せて楽しかったよ」

「名波先生、今から仕事ですか? だとしたらまたお時間を取らせるのも申し訳ないですし」

「今日は勤務を終えて今から帰るところだ。だからその心配はいらないよ」

「そうでしたか」

「ここで会ったのもなにかの縁だし、今から一緒にご飯でも行く?」

「えっと……その」

頭に浮かんだのは薫さんの顔だ。きっと今のこの心境では名波先生と食事に行っても楽しめないし名波先生に気を遣わせてしまうかもしれない。

「もしかして彼氏がそういうの許さないとか?」

「え?」

「こないだ駐車場で会った彼、美月ちゃんの彼氏じゃないの?」

「いや、その……」

なんて答えたらいいのか分からなくて言葉に詰まる。

「彼氏じゃなくて婚約者だったかな?」

「どうしてそれを知っているんですか?」

「病院のナースたちが噂をしていた。まぁ相手があの九条グループの御曹司ときたらうわさ話はすぐに広まってしまうよな」

「そう、ですよね」

やはり私が今一緒に生活している人は雲の上の人なのだと改めて思った。私なんかとはやはり釣り合うわけがない。思わず視線を下に落とす。