倉本さんにレジデンス前まで送ってもらったが、とても部屋に帰る気にはなれない。携帯に目をやれば、薫さんから【じきに帰る】とメッセージが入っていた。
薫さんの前で普通にできるだろうか。気持ちを落ち着かせるために、ビレッジ内を少し歩くことにした。
とにかく波風立てずに残り三ヶ月を過ごすのが一番の得策だと自分自身に言い聞かせる。
「美月ちゃん?」
と、父の病院前を通り過ぎてショッピングモールの方へと曲がろうとしたそのとき、私の名を呼ぶその声に意識がそちらへと動いた。
「名波先生……」
名波先生と会うのは、こないだ病院の地下駐車場で会って以来ということになる。あのときは薫さんを待たせてしまっていたこともあり、ろくに会話もせずにバタバタとして別れてしまった。
「仕事帰りか?」
「いえ。散歩……みたいな感じです」
「そうか。あれ、でも美月ちゃん実家暮らしじゃなかったか? あそこからだとここまではだいぶ距離があるけど……」
「訳あって今、この近くに住んでいるんです」
「そうだったのか」
名波先生が優しく微笑む。
薫さんの前で普通にできるだろうか。気持ちを落ち着かせるために、ビレッジ内を少し歩くことにした。
とにかく波風立てずに残り三ヶ月を過ごすのが一番の得策だと自分自身に言い聞かせる。
「美月ちゃん?」
と、父の病院前を通り過ぎてショッピングモールの方へと曲がろうとしたそのとき、私の名を呼ぶその声に意識がそちらへと動いた。
「名波先生……」
名波先生と会うのは、こないだ病院の地下駐車場で会って以来ということになる。あのときは薫さんを待たせてしまっていたこともあり、ろくに会話もせずにバタバタとして別れてしまった。
「仕事帰りか?」
「いえ。散歩……みたいな感じです」
「そうか。あれ、でも美月ちゃん実家暮らしじゃなかったか? あそこからだとここまではだいぶ距離があるけど……」
「訳あって今、この近くに住んでいるんです」
「そうだったのか」
名波先生が優しく微笑む。

