お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言

「これ、どうしたのですか?」

「九条会長から美月に渡してくれと頼まれたんだ」

「そうなんですか……」

テーブルに広げられたのは、いくつかの結婚式場の資料だった。

「急かしているようで薫くん本人には渡し辛かったのだろう。籍のことは了承したものの、薫くんの気持ちが変わらないうちに早く事を進めたいと思っているようだ。だからこの資料を美月に渡したかったらしい。美月から薫くんに働きかけて欲しいとのことだ」

まさかこのタイミングでこんな話をされるなんてとどめの一発を食らった気分になる。そもそも結婚式なんてする気がない。三ヶ月後には私が勝って薫さんの下を離れ……

あれ、どうしたんだろう?
急に視界が揺らいだ。

それでも溢れ出した想いに蓋をして、涙を零すまいと必死に平静を装う。

「分かりました。私の方からさりげなく話してみます。それではそろそろ薫さんが帰って来るので失礼します。またそのうち顔を出しますね」

資料を受け取り、逃げるように実家を後にした。