お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言

「食べないのか?」

「い、いただきます」

慌てて一口、ミルフィーユを頰張った。パイのバターの風味とクリームからほのかに放たれるバニラビーンズの上品な香り、そして甘みの強い苺の味が口いっぱいに広がり思わず笑みが溢れた。

「口に合ったようだな」

「すごく美味しいです。ありがとうございます」

「美月はそうやって笑ってた方が可愛い」

「え?」

「俺の前だといつも困った顔か怒ったように目を釣り上げていることが多いからな」

「……」

確かに薫さんの言うとおり。いつもどこか身構えていたりする。

「単純な美月にはこうやって餌を振りまいておけばいいとよく分かった。これは使えるな」

「なっ……」

「もっといろんな美月が見たいと心から思ってしまう」

「……っ」

人を動物扱いして意地悪なことを言ったと思えば、今度はこんな思わせぶりなことを言って柔らかく微笑む。そんな薫さんはずるい。これは私を落とすための女慣れした彼の常套手段に過ぎないと分かっているのに。

私の心はジェットコースター並みに上がったり下がったりを繰り返している。それが意味することはよく分からない。微妙な心の変化を感じつつ、ミルフィーユを食べ続けた。