一人になるのが恐くて、鞄を持って帰ろうとしている中本紅音(なかもとあかね)を呼び止めた。 「……紅音、あのさー、ちょっと」 くるりと紅音が正吾の方に振り返った。 「ん、何?」 「やっぱり、いいや……」 いい年をした男が一人が恐いって、気持ち悪がられるよなぁ。 語尾が弱々しく消えてく。 引いていく波のようにスッーっと気持ちが引き返す。