壁に掛かった時計を幾度となく見上げた。その度に針は容赦なく時を刻み進み続けている。
まるで俺の気持ちなど無視するかのように至って冷酷な動きだ。
長い針に細い針が交錯する度に心拍数が上がっていくのが分かる。

危険だ。全くもって危険だ。俺は動揺を隠せずに二人の顔色をうかがった。
二人は冷静だ。それどころか、こんな状況にもかかわらず薄ら笑いさえ浮かべてやがる。
俺は、二人が性根の腐った悪魔に見えた。

再度、時計の針を目で追った。もう何回目だろうか。いや、何回目だろうとそんなことはどうでもよい。
とにかく、急いでくれ。

二人は、ほぼ同時に満足感を表した。そして、俺にこう言ったのだ。

「なんでこんな時にまでカツ丼を頼むの。無理に決まってるって言ったじゃん。しょうが無いなあ、もう。とにかくあと5分だから、来たらサッと食べてよね。じゃあ、先に行ってバスを止めてるから、蛭子さん」

二人は手を振りながら去っていった。