不意を突かれ、ドキッと胸が高鳴る。

夏実は妹を可愛がる姉のように、ニコッと微笑んだ。

「早くしないと取られちゃうよ。幼なじみってだけじゃ、それ以上の発展はないんだから」

夏実は教室を出る。髪には小学生のとき私が誕生日にあげた檸檬の柄のヘアピンをつけていた。

「私が、夏実だったらね…」

ポツリと呟く。もう何度も泣いて、諦めたつもりでいたのに……

私はあの時から、一歩も前に進めていなかった。

「痛っ!!」

廊下から女子の悲鳴が上がる。

見に行くと、隣のクラスの子が床にうずくまっていた。

スカートが切られている。太股からドクドクと血が流れ、痛そうに泣いている。