瑠花と優愛が教室を出る。夏実はまだ席で読書していた。

「どうしたの夏実? 一緒に行こ?」

夏実は首を横にふる。

「今日はパス」
「なんで?」
「七月二十日だし…」

思わずプッと吹き出す。

「六十年も昔の事故のこと気にしてるの? 水に入ると幽霊に引きずりこまれるとか?」

「そういう訳じゃないけど…」

夏実は席を立つ。手には本を持っているから、本気で水泳をサボる気らしい。

「環は悠介のこと、まだ好きなの?」
「えっ」