悠介の笑顔が頭に浮かぶ。もしかしたら今頃、二人は生きていて、プールで助けを求めているかもしれない。

そう思いたいだけかもしれないけど、私にはどうしても、悠介が死んだとは思えなかった。

「少しだけ学校に戻って助けを呼ぶ。それだけならいいでしょ?」
「……ダメよ。絶対」

夏実の声が一瞬だけ別人のものに変わる。

「夏実…っ?」
「いいから、あんたは私の指示に従って」

少し疑問には思ってたけど…
この人、本当に夏実なの…?

「夏実、小学生の頃にあげた、ヘアピンのこと覚えてる?」
私がきく。

夏実は私から初めてもらった誕生日プレゼントがうれしくて、中三になっても学校にたまにつけてきた。

「なんのこと? 今は関係ないでしょ?」

ゾッと背筋に冷たいものが走る。

「環…っ?」

こいつは、夏実じゃない。