「環、環っ!」

夏実の呼ぶ声で、私は目を覚ました。

そこは、海のすぐ近くだ。排水溝から流され、ここまでたどり着いたらしい。

「あの影はっ!」
「大丈夫、しばらくは追ってこれないはずよ」

雨はあがり、雲は消え、空はすっかり暗くなっている。

月の光に照らされた海は藍色に輝き、今日あった惨劇が、まるで嘘のよう。

「そうだ、夏実。学校に助けを呼びにいかないと」

今頃、悠介や桜はプールに取り残されているはず。

「無駄よ。二人はもう死んだ。環が排水溝から脱出したとき、水は全部流れてしまったから…」
「でもっ!」