その可能性は、もうとっくの前に消え去っている。


鬼がシャンデリアを軽々と持ち上げてしまった時点で、こいつらが人間ではないことは確定してしまった。


呆然と立ち尽くしていると、子鬼の一匹がピコピコと跳ねるような足取りで近づいて来た。


その手には赤色と青色の布が持たれている。


間近で見ると、それがハチマキだということがわかった。


「ハチマキなんて懐かしいね。小学校の頃以来に見た」


綾がそう言い、差し出された赤いハチマキを手に取った。


「はぁ? マジでお前ら、高校だって体育祭あんじゃん」


そんな声が聞こえて来て顔を向けると、そこにはセーラー服姿の鬼が立っていた。


さっき大きな鬼が言っていた、17歳の娘鬼だろうか。


娘鬼は大きくて尖っている耳にピアスを開け、モジャモジャのはずの髪の毛はストレートにしている。


見ようによっては可愛いのかもしれない。