授業などで校歌を歌っているのを間近で聞いたことがあったが、綾はもれなく音程を外していた。


本人もそれを理解しているからとても小さな声で歌っていたのだけれど、それでも感づくくらいの外れっぷりだった。


でも、それなら俺が綾よりも下手に歌えばいいだけだ。


浩成には悪いけれどこれなら簡単に負ける事ができる。


「お前ら、歌う順番決まったかー?」


鬼にそう言われて俺はハッと我に返った。


「悪い浩成、先に歌ってくれるか?」


そう言うと、浩成は目を見開いて俺を見た。


「マジかよ、俺が先!?」


当然嫌がると思っていた。


だけど、女子チームの実力を聞いてからの方が負けやすいと思ったんだ。


「あぁ。大丈夫、どんな歌でも俺が巻き返すから」


そう言うと、浩成は渋々頷いたのだった。