俺は思わず耳を塞いでいた。


肉が引きちぎられる音、文夫の叫び、血が滴る音。


色んなものから逃げるように視線を伏せた。


それでも音は聞こえて来る。


文夫の体は子鬼たちによって埋め尽くされて、その姿は見えなくなってしまった。


途端に、ドサッとなにかが倒れる音がした。


振り向くと、綾が床に倒れているのが見えた。


その顔は真っ青だ。


「綾!!」


すぐにかけつけて抱き起す。


「いきなり倒れたの」


ミヅキが横からそう声をかけて来る。


きっと、サプライズで一度緊張がほどけたから耐えられなくなったんだろう。


綾はキツク目を閉じている。


呼吸は安定してるから、寝かせておけばすぐに目は覚めるだろう。


「あ~、ゲーム中に寝たらダメなんだぞぉ!」


子鬼の1人が異変に気が付いてそう言った。