ーー変な夢を見た


真っ白で、何もなくて、怖いくらい静かな空間


視界を横切る様々な光

自分の体から剥がれ落ちるみたいに、その光が俺から離れていく

ただ自分の周りから、そばにいたはずの人やものが次々と遠のいていく感覚

それに比例するように少しずつ暗くなっていく


待って、置いていかないで

俺はここにいるよ


ーーひとりにしないで


持っていたはずの暖かさが体から消えていく

冷たくなっていく

頼むから

離れていかないで


その時

その薄暗い視界の中で、一際弱い光が目に止まった

次々と遠ざかっていく光の中に一つだけ

こちらに向かってくる光があった


その淡い光だけ
他のものとは逆方向にながれている

どれだけ突き放されそうになってもしつこく粘ってこちらに向かってくる光


思わず手を伸ばした


ーー行かないで


しっかりそれを握った

握られた光は少し揺れ動き

俺のそばで止まった



ーーちゃんと帰ってくるよ

ーー急いで走って帰ってくる


  だから待ってて。一人じゃないから