「バイト?」

織原真琴がソファからこっちをだらりと見て言った

「はい」

「どこでバイトしてんの?」

「駅隣のカフェです」

「あーあそこか」

駅の近くだからすごい忙しいのよ
休みの日は特にね


「…今日、バイトだったの?」

あー

「はい、まぁ」

特に理由はないけどなんとなく気まずい

「…休んだのって俺のせい?」

…うん、そう言われる気がしてた


でも
…せい、じゃなくて

「『せい』じゃなくて、『ため』ですよ」

「…俺の、ため」


意味に違いがなかったとしても
そこを勘違いされたくはない

「おせっかいだって言ったはずです」

「…あそ」

ゼリーを渡して笑った


1人にしないって言ったでしょう

今までとは違うんだから

「もう、慣れたなんて言わなくていいんですよ」

「は」

不意に顔を上げた彼と目が合う

「赤ん坊も大人も老人も
みんな人間ですから『寂しい』っていう感情は嫌でも持ち合わせているものです」


『行かないで』

織原真琴は覚えてないかもしれないけど

私にはその気持ちが痛いほどわかるから


「…俺寂しいなんて言ってない」

少しの間を置いて無愛想に言った

はーん?

『行かないで』とか言ってたのは誰じゃ


「それはそれは、失礼しましたー」

「…思ってないだろ」

「そんなことないですよ」