「失礼します!」
黒い扉を開けて入ってきた景色
びっくりするくらい物がなくて質素な部屋
それから壁際の紺色のベット
…の上で頻繁に寝返りを打つ織原真琴
「だ、大丈夫ですか!」
思わず駆け寄る
顔が赤い、息が荒い、それにすごい汗
「ちょっとごめんなさい」
おでこに手を当てる
あっつ…
発熱…
風邪の症状
やっぱり昨日の雨だ
傘を借りてしまったという罪悪感がちくりと胸を刺した
「風邪ですね」
「…ほっとけ、入ってくんな」
虚な目で私を見た彼がボソリと呟き私に背中を向ける
言わずもがな、私の性格知ってるよね?
「無理です」
「…はぁ…そうだったわ…お前うざいんだった」
うざいんだった=おせっかいなんだった
って意味だね多分
「体冷やしましょうか」
「いいって言ってんだろ…今までも熱出した時…1人だったし…慣れてるから」
…
熱を出した時に1人…その心細さは
「私も、です」
私もよく知っている
母子家庭でお母さんは働き詰め
小さい頃から家では1人だった
それが私の日常だったから
「…」
「でも今までとは違います。今は私がいます」
うざいと言われようが、嫌われようが
「頼まれても1人になんてしてやりません」
何度も言ったはずだ
「私は、しつこいので」


