…よし

「真琴くん…あの」

学校がないのでのんびりと起きてきた彼に朝ごはんを出しながら尋ねる


「…ん?」

真琴くんはまだぼーっとしていて
珍しくサラサラの髪に寝癖がついている

夏用の大きなTシャツと長ジャージでさえよく似合う私の同居人は

眠そうな目をこちらに向けた


「…お願いがあるんだけど」

“お願い"

私がそれを叶えるのは得意技

でも、誰かに"お願い"をするのは…

「…どした」

それでも、この同居人になら…と、思ったよりも口が軽く開く


「あのね…ルイくんのところに行きたいの…それで」

「梓」

俯いていた私に真琴くんの眠気の残る声じゃなく、いつもの…よりもちょっと低い声が聞こえる


「それはダメ」



「昨日も言ったろ。ちょっとは自分の身を考えろ。あいつのところへは行かせない」

うぅ

「でも」

「でもじゃねぇ。絶対行かせないから」

…うん

真琴くんが私のために言ってくれてるのは分かってる