『誰かを大切にする感情』

『恋でもしてたんでしょうかね』

『梓が好きなのか?』


ーーもっと、複雑で厄介な感情

ーーもっと…汚い感情


うわ、マジで言ってんの?

…俺

遠ざかっていく同居人の背中を見ながら

小さく口を開く

「梓…」


『真琴くんが、いてくれてよかった』


あのお節介焼きのことを

あの無駄にうるさい強気なやつを

あの、真っ直ぐすぎてすっげぇかわいい同居人を…

俺は


ーーー


ああ、そうか。

本当はもっと前から知っていたのかもしれない

気づかないふりをしていただけで

あの同居人を見ると何故か動悸が早くなるのも
無防備な姿に何故か変に焦るのも

全部"これ"のせいだったんだ


このいやに甘ったるくて胸が締め付けられるような恋心と、背中合わせにいつもある

決して綺麗とは言えない濁った感情は

どうやらとてつもなく厄介な


独占欲らしい