扉の前でふっと息をつき

ドアノブに手をかけたところで

俺は冷静になってしまった


俺昨日えぐいこと…してね?

やばいことしてる…よね

まだ腕に残る、慣れない梓を抱きしめた感覚

いつも強気な梓の弱々しい顔

真っ赤に染まった余裕のない顔


それから

『真琴くんがいてくれてよかった』




「ふっ…」

乾いた笑い声を出して

ぐっと上を見る

そして


・・・

すとん!

とドアの前にしゃがみ込んだ




うああああああっ

まじで俺何やってんの!?

バカなの!?
え、バカなの!?

抱きしめるか?普通
渡したくないとか言うか?普通

どこの王子だよ!きっしょくわりぃ!

とりあえず昨日の俺を軽く殺めたい


梓に引かれたかな

でも悪いのは梓だよな

あの顔向けられたら制御できなくなるっつの
いきなり弱いとこ見せられたら我慢できないっつの

いやなんの我慢だよ
何を耐えてんだよ俺は

梓は同居人だろ

同居人!それ以外のなんでもない!


気色の悪い自問自答を繰り返しながら
立ち上がって部屋の中をウロウロする

落ち着け俺

いつものクールな感じを取り戻せ

織原真琴のキャラをぶち壊すな(もう遅い)


とりあえず…

忘れよう

一旦なかったことにしよう

無理矢理そう納得させ、一呼吸置いてから部屋を出た