「…なんで、梓は怪我してんの?」



まさか名前を呼ばれると思わず、ビクッと反応してしまった

「え…それは」
「勝手に…転けたんだよ」
「そうそう、あの子が一人で転んじゃっただけ」

……なんてやつだ

このご時世、ここまで糞のような性格をした奴がいるとはもはや驚きだ

立ち上がることを後回しにして、散らけたカバンを片付ける


「…後ろから背中押したくせに、よく言うな」



「え」

み、見てたの?

思わず振り返る


真琴くんの見たこともないくらい冷たい目

私が初めて家に行った時より怖い目をしている

…怒ってるんだ

真琴くんが…怒ってる


「次梓に手出したら…女だろうがマジで潰す」


その切長の目をいつもより大きくさせて

瞳孔がかっ開いているかのような恐ろしい表情を
私の背中を押した女子に向ける

その子は鞄を落とし、ついでに腰を抜かして座り込む

真琴くんは睨む時に鋭い目を向けるタイプではなく目を大きくして圧をかけるタイプらしい…


誰も何も言わなかった、言えなかったのか

しんとした空気が肌を刺した