「梓?」

「…あ、うん」

「ごめん、急に言って混乱した?」

「うん…」

「お前のことだから、たぶん言わなかったら一生気づかなかっただろうから」

うん

気づかなかったと思う


「ちょっとでいいから…考えてみて」

蒼馬がフッと優しく笑う

「…うん」

考えてみる…


「本当は死ぬほど他の男の家になんて帰したくないけど」

なっ!?

「わがままばっかも言ってられないから。じゃあね梓、また明日」

いつも通りの笑顔でそう言った

……

去っていく背中をしばらく見つめた後、とぼとぼと歩きだす



友達、だと思ってた人が

恋愛対象に切り替わるこの瞬間


…ドキドキと

照れ臭さと

嬉しさと

そしてどこかちょっと感じる

…寂しさ


もう今までのように接することはできないのかと思うと

何だか胸が冷たくなる

…そんな、私の錯覚


…帰ろう