真琴くんに言おう!
頑張ったよって、真琴くんに教えてもらったところ全部できたよって
凄いでしょって言いに行こう!
家に帰れば会える
早く帰ろう、帰って会おう
そんな浮かれた気持ちで階段を駆け降り、下駄箱に繋がる廊下を曲がった
とき
「真琴くーん!」
「テストどうだったー?」
女の子の高い声が聞こえた
その声が呼ぶ名前に思わず足が止まった
バレないようにこっそりその声の元を探る
その声が聞こえたのは下駄箱
そこに真琴くんとそれを囲むように数人の女の子がいた
…みんな、スカートが短くて、上手にメイクをした可愛らしい女の子達
真琴くんはちょうど背中を向けていて顔が見えない
「……。」
…だめだ
…学校では他人のフリをするっていう約束
あの子たちみたいに、堂々と話しかけることは、許されない
他人の、フリ
「真琴くんに教えてもらったところ完璧にできたー!」
「私も私も!マジ感謝ぁ!」
…
そうか、そうだよね
私にだけ教えてくれたわけじゃない
真琴くんはみんなの憧れの人、王子様だなんてクサい呼ばれ方してるレベルの人
あの子たちも、真琴くんに教えてもらったんだ
…いや、でも私は、なんとまさか同じ家だし、毎日教えてもらったし
……なんてね
なんでこんなに必死になってるんだろうね、私は
何も見栄を張るところじゃないはず…なのに
チクリと慣れない胸の痛みに少し歯を食いしばった


