「…きっといつか、真琴くんも私も、この人だって思う相手に恋をするよ」
生きているうちに何人の人間と出会うと思う?
その計り知れない数のうち、この人だって思う人を見つけられる日が来る
きっと
「……」
…?
ん?
隣を歩いていたはずの真琴くんの気配が消える
「どしたの?」
真琴くんは少し後ろの方で足を止めていた
「…梓は」
「何?」
何を考えているのか一切読めない真琴くんの表情
「梓は…今までに一度も出会ったことがないの?
その…この人だって思う人と」
んー
「そう…だね」
「この前言ってたバスのやつは?」
ああ
脳内で蘇るあの時の記憶
黒髪の男の子
たしかに…特別な感情だけど
「たった一週間だったからなぁ」
私はそういう感情に疎いから
よくわからないの
ただ、もしあの気持ちを恋だよと言われたら
ああ、そうなんだって納得できると思う
きっと私は
もう2度と会えないだろうあの男の子の記憶に
恋と名付けたいんだろう
「…この気持ちが恋なのかどうかは、もう一度でもあの子と会えたら分かるかもしれないね」
一週間なのに鮮明に残る彼の記憶
夢にまでみる夏の日
どこで、何をしているんだろう
たった一週間の
私の秘密の思い出


