「ま、待って!」

思わずその腕を捕まえた

「大丈夫だよ、別にどこにも行きやしない」

…ぅ

落ち着いた声が聞こえた

恐る恐る手を離すと、同じソファの隣に真琴君が座った気配を感じた

「ここにいる」

「…うん」


…今になって恥ずかしくなってくる

逆に電気が消えててよかった

多分私、ザ・羞恥心って感じの顔してる


「…意外だな」

「え?」

「暗いところ苦手なの」

そうかな

特にこれといった理由やトラウマはないけど

昔から暗いところだけは苦手だったな

夜も好きじゃない


「こういう時こそお節介発動するもんかと思ってた」

「すみませんねぇ役立たずで」

いやみったらしく返すと

「あっはは」

無邪気な軽い笑い声が聞こえる


「いや実はさ、俺も暗いところ得意じゃないんだよね」

「え、そうなの!?」

「まああんたほどじゃないけど。高所とか閉所とかよりは断然暗所がダメ」

あわわわ

私はそんな人に泣きついていたのか

申し訳ない

「だから懐中電灯もすぐ取り出せるところにあるんだよ」

なるほど

「でもあんたが俺以上に怖がってたからなんか今は平気だったわ」


顔は見えないけど

笑っているような吐息が聞こえた

「…すみません、頼りきっちゃって」

「…いいよ別に、俺男だし」

…そうか
…そう、だよね

そうだった

同居人は、真琴君は


男の人だ