不意に視界に入った時計を見た
9時半か
特にすることもないし、リビングに居よっかな
…あいつもいるし
だるい体をよっこらせと起こす
毎度のことながら立ちくらみと戦うべく勉強机に両手をついてハァとため息を流す
視界の端、机の上の小さな箱の中に入った黒い定期
立ちくらみの影響で視界が悪い中、その黒い定期をただ眺める
この立ちくらみなんとかなんねぇのかな
やっとのことでクリアになった視界と同時に扉へ向かった
ガチャ
ガチャ
俺が自分の部屋を出たと同時に突き当たりのリビングの扉も開いた
「あ」
天宮梓が全く同じタイミングで部屋から出てきた
荷物を持って薄い上着を羽織っている
え
「もう行くの」
「うん」
え、早くね?
「まだ30分じゃん。そんな遠くないでしょ」
駅なら行くのに10分もかからないだろ?
「いつもこのくらいだよ」
…ふーん
もっとゆっくりしていけばいいのに
「じゃあいってきます!」
ん
俺の返事に対して何か言いたげな表情をした天宮梓
『行ってらっしゃい』って言えってか?
やだね