「あのー落としましたよ」 自転車を派手に壊した中学の夏 黒いケースに入ったバスの定期を拾った 制服を崩して着ていた同い年くらいの黒髪の男の子 その日、たまたまバスに乗った そんな私の前に現れた彼にそれを差し出す 「ありがとう」 何かに例えるとしたら 彼の笑い方はまるで風のようだった 優しくて、柔らかくて、包み込むようなほほ笑み その日初めて出会った彼に もし、もう一度会えたら 「どういたしまして!」 それは 運命というやつだ