徒歩で30分くらいの高台に学校があって、そこに行くまでには桜並木が道を彩っている。

花に思いを巡らせるほどロマンチストではないが、なぜだか今日の桜はいつもよりも淡く、儚い色をしているように見える。

桜の季節がやって来ると、俺は思い出したくもないことを思い出してしまう。

ふとアイツの顔がよぎり、俺はそれを振り払うように、坂を早歩きで登った。

しかし、しばらく歩くと、俺のもやもやの根源が視界に入ってきた。

高校に入学し、突如バッサリ切ってショートボブになった髪は、いつ見ても艶やかで汚したくなる。

俺は感傷的な心を忘れることをこの短時間で誓い、スタスタと近づいて行った。