切ないほど、愛おしい

「ふざけないで。離しなさいよ」

相手を睨みながら語気を荒げた。

私がタバコを吸おうと何をしようと関係ないはずなのに、なんでかまうのよ。
放っておいて欲しいのに。

掴まれた手を離そうともがく私。
穏やかな表情を崩す事なく動こうとしない男性。

いい加減大声でも出してやろうかと思ったとき、

えっ?

男性が私との距離を詰めた。

フッと、爽やかな柑橘系の香りがする。
こんなにも近くで男性の香りを意識した経験のない私は、完全に固まった。
自分の鼓動が大きく聞こえて、ガタガタと足が震える。

「無理するんじゃない」
それは、とても優しい声。

余裕たっぷりに笑って、クシャッと私の頭をなでた男性。

嘘。
この人・・・私に触ってる。

「なんで?」
こんなことするのって聞きたくて、声が出せない。

だって、
気がつけば涙が頬を伝っていたから。

イヤだ。
泣きたくないのに、涙が止らない。

ウッ、ウウッ。
もう限界。

強がっていた私の、心がポキンと折れた。