切ないほど、愛おしい

とりあえず駅前のコーヒーショップに入り、窓際のカウンター席に腰を降ろした。
目の前には注文したホットコーヒーがあり、ザワザワとした喧噪が耳に入ってくる。

いつもと変わらない日常。
当たり前の1日。
何も特別ではないのに、今の私には込み上げるものがある。

まだ湯気を立てるコーヒーを一口飲み、
フゥー。
と、息を吐いた。

その時、

ブーブーブー。
カウンターに置いていた携帯が震えた。

お兄ちゃんかなと思ってみると、
えっ?
麗子さんからだ。

確かに、連絡先の交換はしたけれど・・・
まさか掛かってくるとは思わなかった人からの電話に驚いた。
そして、

「もしもし」
思わず出てしまった。

『もしもし、乃恵ちゃん?』
「はい」

『よかった、出てくれて』
麗子さんのホッとした声。

「もしかして、お兄ちゃんから連絡がありました?」

このタイミングでの電話は他に理由が思い当たらない。

『うん。10年ぶりに来た連絡が「妹に電話してくれ」なんて、笑わせるわよね』

フフフと、楽しそうに笑う麗子さん。

「すみません」
私としては謝るしかなかった。