立場的には。

 僕は、美幸の『彼氏』らしい。

 休みの日に、美幸と一緒に、買い物をしたり、映画を見に行ったりするのが、とても楽しかった。

 美幸とだったら、ファミレスでケーキを食べながら、何時間でも莫迦話をしていられた。

 ただ、そんな関係だったのに。

 男女で二人。

 仲良く街を歩けば、立派な彼氏、彼女だって言われた。

 だけども、僕は。

 美幸とキスをしたり、それ以上のコトをしたいとは、思わなかった。

 友達に聞けば。

 あんな美人と一緒にいて、何も感じないのは、お前が『お子様』だからだ。

 ……なんて言われたけれど、僕は、どうでも良かった。

 彼女の将来の夢は。

 元気な子供を生んで『お母さん』になることだとは、判っていたけれど。

 まだ、高二の僕たちにとって、それは大分先の話だったし。

 今のまま、美幸と一緒に居られるのならば。

 急いでオトナになんて、なりたくなかった。

 それに。

 美幸の隣に居ることは、僕にとって、とても自然だったから。

 なんだか、世間一般とは、微妙に意味合いが違う気のする『彼氏』って言う立場に収まっているのも、そう、悪くはなかった。

 彼女を『抱く』コトが『愛してる』証明だとも思ってなかったから、まわりがなんと言おうと別に良かった。

 例え。

 栗田みたいなヤツが、僕を殴りに来るコトを差し引いたとしても。