世界が終わるとき、そこに愛はありますか

「コイツん家まで送ってやって」


横目であたしを見ながら指示を出す姿は厳格な上司だった。


「深景は?降りんの?」


「あぁ」


完全に仕事モードなのか、纏う空気を少し変えた冷たい横顔が綺麗だった。


「…また、会える?」


無意識に口走っていた。


今日のあたしはどこかおかしい。


今まで、誰かに猛烈に惹かれたことなんてなかったのに。


「あんまり俺と関わらない方がいい。それが一番お前を守ることになるから」


「…そっか」


残念だなと思う自分がいる。


深景さんともっと一緒にいたいと思う自分もいる。


初対面の男にこんな感情を抱くなんてあたしはおかしいんだろうか。


「そんな顔すんな。な?」


ぽんぽんっ


深景さんは、あたしの頭を軽く撫でてすぐに車から降り、ドアを閉めてしまった。